実は今回の旅でいちばん大変だったのは、過酷なハナ・ハイウェイでも、家探しでも地震でもなく、この日の午前中から激しさを増す大雨だった。でも原生林が生い茂るハナにとって雨は日常のはず。だからこそ、こんなことになるとは思ってもいなかった。
11時30分の出発予定時刻まであと1時間ほどあったので、ダラー・レンタカーに車を返却し、素直にホノルル便が到着するのを待っていた私たち。だが30分たち、1時間たっても飛行機は来なかった。人々は飛行機の轟音が遠くに聞こえると外に出て雨空を眺めるが、その音が遠くなっていくと「あ〜あ」という落胆の声を出している。
「どうなってるの? ホノルル行きは来ないの?」
さっきから何回か、直通電話で問い合わせていた客のひとりに私から聞いてみた。
「この天候だから、近くまで来てるんだけど着陸できないらしい。ただ、いつ来るか分からないので、とりあえず待ってるほうがいいですよ、って言われたの」
あきれた。
しばらくしてレンタカー屋の女性に、「ハナではこういうことはよくあるんですか?」と聞いてみた。言葉を濁しながら、アドバイスをしてくれた。
「とにかく、航空会社に直談判することだね。空港に来て待ってることを伝えたほうがいいよ」
カウンターに鎮座する受話器を持ち上げ、パシフィック・ウィングスに電話をしてみた。私たちはインターネットで予約した7名で、11時半ホノルル行き100便をハナ空港で待っているがまだ来ない。いつ来るのか、と。電話口でしばらく待たされた後、
「11時半の便は変更になりました。2時に空港にいてくれれば、ホノルル行きの便が2時半頃着くかもしれませんので、乗れると思います」
またまたあきれた。変更なんて知らされていない。そもそも掲示板がない。そんなもんでいいのか? 飛行機って。
「2時ですね、待ってますから」と仕方なく念を押して電話を切る。
オモさんはすっかりネガティブ思考に陥っている様子。
「暖かいコーヒーが飲みたいな....」
相変わらず飛行機を待っている客が、遠くの景色を眺めながら面白いことを教えてくれた。
「普段はここから山が見えるんだけど、その山が見えないくらい天候が悪いときは、ハナ空港に飛行機が着陸しなくなるのよ」
ここで私は、この日のホノルル行きを8割方あきらめた。なにしろ遠くを見ても山なんかまったく見えないのだ。今日の雨で飛行機がハナに来る確率は極めて低い。もう一泊ハナにすればよかったのかも? すかさずレンタカー屋の女性に聞いた。
「さっき返した車、もう一度ちゃんと借りなきゃだめかな。貸してくれるとうれしいんだけど。私たち、ここから出られないよ」
でもレンタカーの女性は首をたてにふらなかった。
「そんなことしたら私の責任になるもんね」
2時までの長い待ち時間はウクレレ弾いて歌うしかない。寒さとショックでうなだれるオモさんを励ましつつ、ウクレレ演奏開始。レンタカー屋の女性は安心したように笑顔になった。
しかし雨はさらに激しさを増した。
2時半になっても一向に飛行機の来る気配がないので、再度電話をかけてみた。
「3時になります」
ホントか? もうなにも信じないよ。私たちが返却したレンタカーは、すでに駐車場から運び出されてしまっている。一緒にホノルル行きを待っていた客も、あきらめて迎えの車で帰っていった。ひたすらここでウクレレ弾いて、歌って、まつしかない、私たち。
最後の手段はレンタカー屋に泣きつく.......。